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損失限定型投資信託の落とし穴

 

「投資はしたいけど元本が減るのが怖い」

多くの人が投資に対して二の足を踏むのは、元本割れで損失を被るのが怖いということが理由だと思います。
たしかに、銀行預金や保険しか知らない多くの日本人にとっては元本は確保されるのが当たり前であり、元本が減る可能性があるということは恐ろしいことなのでしょう。

 

そんなニーズを受けて、最近世の中では「損失限定型」と呼ばれる投資信託が注目されているようです。これは、基準価格が下落しても損失が限定されるという内容で、特にリスクを負いたくないという方や老後資金を運用する高齢者に最適の投資信託といわれます。

 

こうした商品に興味を持つのは「投資はしてみたいけれど、損をするのが不安」という人たちです。
たしかに、最悪時の損失額があらかじめ分かるという点は、投資初心者やリスクを取れない高齢者にとってはとても魅力的だと思います。

 

ですが、世の中そんなにうまい話はありません。
投資は基本的に、ハイリスクであればハイリターン、ローリスクであればローリターンというのが基本であって、儲けたいけど損はしたくないというような良いとこ取りのものはほぼ存在しません。

 

本日は、投資初心者や高齢者の方が陥りやすい損失限定型投資信託のワナについて見ていきます。

 

■低リスク・高リターンはあり得ない

 

投資の世界ではリスクとリターンはトレードオフ(両立しない関係)です。つまり、低リスクなら低リターンであり、低リスク・高リターンはあり得ません。

 

損失限定型投資信託は多くの場合、株式などのリスクが高い資産の保有を低めにする一方、短期金融資産(実質的に現金のようなもの)の保有割合高めにしている構造になっています。

 

どういうことかと言うと、このような組み合わせにすることで値下がりによる損失を限定する(ローリスク)代わりに高いリターンを諦める(ローリターン)ということです。
損失限定型というと新しさを感じるかもしれませんが、仕組み自体は今までの安定的なバランス型投資信託とほぼ変わりません。

 

このようなタイプの投資信託は、総じてコストが高いというデメリットがあります。
実際に発売されている商品を見てみると、運用のコストである信託報酬が年1%~1.5%前後が多いようです。

 

「たった1%」と思うかもしれませんが、この手数料は利回りに大きく影響してきます。
仮に投資信託から得られるリターンが3%だったとしても、正味のリターンは2%になってしまいます。
短期で見れば小さい差かもしれませんが、1%のコストを取られるか取られないかだけで、72年後には運用結果の差は2倍にも及びます。

このような投資信託の手数料控除後の実質利回りは、せいぜい1~2%が限界です。

たった2%のリターンを得るために1%のコストを払うということは手数料比率としてはものすごく高く、非常に効率の悪い投資方法と言わざるを得ません。

 

■インデックス投信と定期預金を組み合わせる

 

それでもどうしても元本が減るリスクを極限まで抑えたいという方は、このタイプの投資信託を買わずとも別の方法で低コストで同じような投資をすることが可能です。

 

損失限定型投信では株式の組み入れ比率が10~20%程度です。残りは債券や短期金融商品で運用されています。
このことがわかっていれば、同じ100万円投資するのであれば、定期預金に80万円、株価指数に連動したインデックス投資信託に20万円それぞれ資金を振り向ければ損失限定型投資信託と同じような値動きが期待できます。

 

損失限定型投信では100万円投資すると、信託報酬が1%だとしたら年間1万円の手数料がかかります。

一方、インデックス投資信託の信託報酬はかなり低く、年間0.2%程度の商品も珍しくありません。これであれば、20万円の購入では年間400円の手数料で済むことになります。
長く運用すればするほどトータルでは大きな差になるでしょう。

 

リスクのコントロールは高い手数料を払って運用会社にお願いする必要はなく、自分で安定的な銀行預金などを持っておけばいいだけです。

「損失限定」や「元本確保」という日本人が騙されやすい言葉やセールストークに惑わされてはいけません。

 

■リスクを抑える最高の方法は、時間をかけること

 

結論として、損失限定型投資信託は販売元の金融機関が儲かるための商品であり、私たち投資家は買うべきではありません。

だったら、同じお金で手数料が安いインデックス投資信託を買うべきです。

 

特に資産形成においては、たとえハイリスクな投資であったとしても適切な方法でじっくり時間をかけて取り組むことでリスクを抑えた投資ができるようになります。

 

既に高齢者の方はじっくり時間をかけることは難しいかもしれませんが、日本人の平均寿命が84歳と言われている現代では、50代の方であっても10~20年後を見据えて投資をすることは十分に可能です。

 

投資においてリスクを抑える最高の方法は、時間をかけること。リスクを可能な限り抑えてお金を安定的に殖やすためには、とにかく少額でもいいので早いうちから資産形成に取り組むことが最も確実な方法です。 

 

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