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大学がヘッジファンド投資

超低金利が続き、現預金や債券投資だけではなかなか利益を確保することができない世の中になりました。

私たちの年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も国内の低金利を受けて株式等のリスク性資産への投資割合を増やしていることはご存知の方も多いかもしれません。

 

それに続いて、国内の大学でもリスク性資産への投資割合を増やす動きがあるようです。

玉川大学や早稲田大学、国際基督教大学(ICU)で特によく見られる傾向のようですが、一体なぜ大学がリスク性資産への投資を増やしているのか。

 

本日は、大学を取り囲む現状について見ていきます。

 

■着実に広がるリスク性資産への投資

 

 

玉川大学では、10月から数百億円ある運用資産のうち、10億円をリスク性資産に振り向けることを決めました。

運用資産の大半は日本国債などの安全資産ですが、投資対象をヘッジファンド、REIT等の株や債券とは違う値動きをする代替資産(オルタナティブ資産)に広げたようです。

 

ICUも株式運用の比率を3割強から5割程度まで高める方針があり、早稲田大学でも寄付金や過去の運用益を原資にした110億円をお金を株式で運用して年率5%の利回りを目指すという方針を掲げました。

 

大学がヘッジファンドを利用するのは驚きですが、米国の大学ではヘッジファンド等への投資が運用額の5割超を占めていることを考えると、これらの大学の動きは日本の大学が世界基準に一歩近づいたということが言えるかもしれません。

 

■背景には、厳しい大学経営の現実

 

 

日本の大学は、少子高齢化で学費収入の減少が見込まれているという問題に直面しています。
私立大学の収入構成の7割以上が学生からの納付金とされていますが、少子化で学費収入が減り国の助成金も減少しています。

そこで、各大学は競争力を保つために運用利回りを高めて奨学金や研究開発費の財源を確保しようとしているのです。

 

現在の私立大学全体の運用資産は合計で8兆円ほどあるとされていますか、そのうちの9割超は現預金と債券で運用をされています。

2016年の運用利回りは1.04%と、低金利の煽りを強く受けています。

一方で、私たちの年金を運用しているGPIFは株式への投資割合を増やしたことが奏功し、同年度の利回りは5.86%。

当然、リスク性資産を組み入れると損失発生時は痛手を被ることになりますが、リスク性資産を組み入れるかどうかで大きく利回りが変わることも事実です。

 

資産運用大国である米国の大学と比較してみると、差は歴然です。

運用資産を294億ドル(約3.2兆円)保有しているエール大学は中国の投資会社へ投資したことにより、2018年6月末の運用利回りは12.3%。過去10年の平均は7.4%に達していて、米国の大学の平均利回りである5.5%を優に上回っています。

 

米国の大学は積極運用が基本で、運用資産のうち、ヘッジファンド等の代替投資が52%、海外株と米国株を加えると88%がリスク性資産が占めています。

 

■なぜリスクを負ってまで高利回りを求めるのか

 

 

高い運用利回りの追求は当然リスクが伴います。

現に、リーマンショックの時には多くの国内外の大学が、運用で大きな損失を出しています。

その後、日本の大学ではリスク性資産への投資割合は低くなりましたが、米国の大学では投資方針がぶれることはなく、リスク性資産への投資割合は高いまま維持されることになりました。

 

投資方針がぶれない理由は、米国の大学は学費だけでは競争力を維持できないということを認識しているからだと言われています。

一時的な痛手を被ったとしても、将来の成長や魅力を高めるためにはリスク性資産へ投資をして高い利回りを出すことが必須だと考えたのでしょう。

これは、私たち個人も同じです。

損失が怖いからといって現預金ばかり保有していては高い成長や自分の魅力を高めることは期待できません。

 

目先の動きにとらわれることなく、何が本当に必要なのか。

その事がしっかり認識できれば私たち個人の投資割合も変わってくるかもしれません。

 

 

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