
日銀の金融政策変更が私たちに及ぼす影響
突然ですが、日銀が7月30、31日にかけて金融政策決定会行会合を行ったことはご存知ですか?
日銀の金融政策決定会合とは、日本銀行が原則として毎月1~2回、2日間に渡って開催して金融政策の方向性や政策金利の上げ下げなどの金融政策運営を討議・決定する会合のことを言います。
つまり、今後の日本の金融情勢をどうしていくかを決めるための会議ということです。
この会合の決定事項は私たちの生活にも大きく影響を及ぼすことになりますが、今回の会合ではいくつか政策の変更点がありました。
そこで、本日は日銀の金融政策の変更ポイントと、私たちの生活にどう影響してくるのか、ということを見ていきたいと思います。
◼変更したポイントは大きく2つ
まず1つ目は、長期金利の変動の容認です。この長期金利とは、具体的には今までは長期金利については0%程度に誘導することになっていましたが、今回の会合で経済物価情勢に応じて上下0.2%程度まで変動することを容認するという文言が付け加えられました。
日銀による市場での国債以外の資産の買い入れについては、ETFおよびJ-REITについて、保有残高がそれぞれ年間6兆円、900億円に相当するペースで増加するよう買入れをしていくことになっています。
ただし、ETFの6兆円については内訳がかわっており、TOPIX連動型のETFの買い入れを増やすことになります。
日経平均株価は対象銘柄が225銘柄と、銘柄数が少ないために日銀の継続的な株の買い付けにより、一部銘柄で日銀の保有率が高まっていたことが問題視されていました。
そこで、東証一部上場銘柄(約2000銘柄)すべてが対象となるTOPIXの買い入れ額を増やすということが決まりました。
◼私たちへの影響は
日銀の金融政策は日本の景気に大きな影響を与える可能性があります。
全体の大まかな枠組みとしては金融緩和を続けていく方針に変化はないのですが、金融緩和による効果より副作用が目立ってきた昨今、いつまでもこの金融緩和を続けるわけにはいきません。
諸外国は少しずつ金融政策の正常化に向かっていることもあり、日本も政策の正常化に向けて動くことを感じさせる会合内容となりました。
長期金利の上昇を容認するということは、長期金利が少しずつ上がってくる可能性があるということです。
では、もし長期金利が上昇したら私たちの生活にはどのような影響があるのでしょうか。
具体的には、住宅ローンをはじめとする借入の金利や銀行預金の利息、保険の予定利率等が上昇する可能性があります。
また、TOPIXの買い入れ額が増えるのであれば、株式市場ではTOPIXのETFを日銀と一緒に買い進めていくことでその恩恵を受けることができるかもしれません。
TOPIXに連動するETFは、今後毎年4.2兆円ほど日銀が買い増していくとされています。
現在東証一部の時価総額は400兆円程ということを踏まえると、毎年の日銀の買い付けだけで1%ほど株価を押し上げる効果があると考えることができます。
そのため、日銀と同じくTOPIXに連動するETFに投資をすることで日銀の買い付けによる株高の恩恵を受けられる可能性があるわけです。
◼物価の見通しは引き下げ
これらの日銀の一連の政策の最大の目的は、物価上昇率2%目標の達成です。しかし、物価上昇に関しては思うように進んでいないため、物価の見通しについては今回の会合で引き下げられることになりました。
18年度の物価上昇率の見通しを前回4月の1.3%から1.1%に、19年度を1.8%から1.5%に、20年度は1.8%から1.6%にそれぞれ引き下げています。
物価上昇の見通しは引き下げられましたが、毎年1%程度の物価上昇は起き始めていることは現実です。今までのように銀行預金や保険にお金を置いておくだけでは、インフレによってお金の価値が減っていく時代に突入したことは意識しておいた方が良いでしょう。
日銀は粘り強く物価上昇目標の達成のために金融緩和を続ける構えです。私たちも政策のことを知った上で、自身の資産を目減りさせないようにきちんと対策を考えておきたいところですね。